落とし物の封筒

私はマンションのフロント係をやっている。

まぁこのマンションは入り口にも鍵がかかってるから住人以外自由に出入りできないし、仕事なんてほとんどない。

私のマンションではフロントに落とし物箱を置いていて、住人はそこに拾ったものを入れていく。

鍵だの傘だのゴミだの、ときには写真とか手紙も入っている。

それの管理も仕事と言えば仕事だ。

手紙って言って思い出すのは田中さんのことだ

半年くらい前、朝出勤したときに箱の中を見ると封筒が入ってたので、よく見てみると名前と部屋番号が書いてあった。

601の田中って、あの綺麗なOLさんの部屋じゃないか、と思ってドアのポストに入れておいた。

彼女はいつも私に挨拶してくれるし、前にも書類の落とし物をしたりで、意外と抜けてるところがあるみたいで少し微笑ましい。

でも数日後また同じような田中さん宛の封筒が、落とし物箱に入ってたのは不思議だったのを覚えている。

田中さんもそのあと、挨拶もなくすぐに引っ越してしまってとても残念だった。

それに比べて今フロントに一番近い部屋に住んでる男の人は無表情なうえに無愛想だし、110のおばさんは角部屋なのに生ゴミ臭いって文句をなぜか私に言うし、その隣に住んでる若い女の子は引き籠もりはじめて家賃も数か月滞納しているし。

一番関わり合いのある一階にろくな住人がいない。

なんで田中さんは引っ越してしまったんだとため息が出るばかりの今日この頃。










意味がわかると怖い話
「落とし物の封筒」
の解説・考察

imi
imi

むむ。これは意味がわかると怖い話の中でもよく練られた話ですね。
すぐに解説に進まずにゆっくり謎解きをしても良いかもしれません。
あなたは意味が分かりましたか?それでは解説です。

「601田中」と書いてあるが、これを回転させて逆さにすると「中田109」になる。

110のおばさんは角部屋なので、その隣の部屋は「109」である。

・109の中田とい女性が引き籠りで数ヶ月も家賃を滞納している
・110には生ゴミの匂いがする
・フロントに近い(多分一階?)に住んでいる男は無表情で無愛想

ということを考えると、
その男が109の中田さんのストーカーで、109の中田さんあてに手紙を書いていたのをこの管理人が「601田中」と勘違いし、601に投函。
男は返事がないことに苛立って、109の中田さんを殺害し部屋の中で腐ってしまっている。
そして601の田中さんはその手紙の内容に慄き、引っ越ししてしまった。

という感じかな。なかなかよくできた話だ。

-IMI-

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「落とし物の封筒」の解説・感想