自称占い師

「あなたのお母さんは死んでいないわね」

こっちをすごい目で凝視しながら、その自称占い師は言った。

『ほら来た。おきまりのどっちとも取れる台詞』

「そうですね」

しらけ気味に俺は答える。

「お母さんはずっとあなたのことを見ていますよ」

『はいはい。生きてようが死んでようが当てはまるよね、それって』

「そうなんですか。そりゃうれしいな」

インチキ占い師がボロを出すようわざと感心してみせる。

「でも、悲しい別離があったのね。とても悲しんでらっしゃるわ」

『だろうね。死んでたら死んでたで別離だし、近くに住んでたら母親のこと聞くわけ無い。つまり俺が家を出て離れて暮らしてても別離だし。』

「そこまで分かりますか。すごいなー」

もう棒読み。

「行き先が無くて途方に暮れてるみたいね。心当たりは?」

『ほら、こっちに答えさせて自分が当てた風に持ってくんだろ?成仏できずに迷ってるとも取れるし、生きてたら俺の親ぐらいの世代がいまさらどこ行くってんだよ。』

「心あたりと言ってもねぇ・・・」

答えてやんない

「昨日会ってるのに?」

『げ!なんでだ。いきなり具体的に・・・怪しまれてると思って一か八かカマかけて来てるのか?まさか・・・本物?いや、まさか、全て見透かされてる?やばいのは俺?』

「へ?昨日さ、さぁ・・・なんのことだか・・・・だとしたら今、どこに?」

やばいと思いながらも声が震えちまってる・・・

「あなたの後ろ」

「自称占い師」の解説・感想