「なぁ、面白そうだから行ってみようぜ!」
「だめだよ。面白がったら本当に霊が寄ってくるんだから。」
「大丈夫だって!今度家の近くの店のケーキおごるからさ!」
僕は親友に誘われて肝試しに行くことになった。
乗り気じゃなかったけど、彼の交渉に折れてしまった。
僕はケーキ好きなのだ。
場所はかつて病院だった建物で夜になって暗くなるとお化けが出るらしい。
でも昔何かあったとか、詳しいことは知られていないからガセかもしれないし…大丈夫だよね。
肝試しの日、辺りが暗くなってから親友と一緒にその建物に入った。
中は資料や器具など色々な物が無惨に散らばっていた。
その時
「あれーっ!?俺カメラ持ってくんの忘れた!カメラ無いとお化け撮れねーじゃん!佑介、ちょっとダッシュで取りに行ってくるわ!ここで待ってろよ!」
「え!?ちょっ、待っ…」
親友はカメラを取りに家に戻ってしまった。
僕は怖いのが苦手だ。
こんなところに一人でいるなんてとんでもない。
でももう親友の姿も見えないし、追いかける勇気も無いし。
…ケーキにつられて来るんじゃなかった。
でも親友の家はここから結構近い。
すぐ戻ってくると信じてじっと待つことにした。
あれ…
「女の声…?」
何を言っているのかは分からないが、上の階から響いてきているようだ。
怖い。
その声は僕のいる一階にだんだん近づいてくる。
ゆう…す、け……
!!今確かに女の声が僕の名を呼んだ
人って本当に怖いと動けなくなるんだね。
僕は立ち尽くした。
僕の名を呼ぶ女の声がますます近づいてくる。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
もう訳が分からない…
廊下の奥の方に女の姿が見えた。
遠くからでも青白く見えて人ではないと一目でわかった。
僕は固く固く目をつむる。
頼む…頼むから来ないで…怖い…
「佑介」
耳元響いた声に驚いた僕は、足元に転がっていた見覚えのある銀色を振り回した。
その瞬間…
体に生暖かいものが降り注ぎ、辺りが眩しい光で包まれた…。
ぎゃああああああぁぁぁ
……女はいなかった