とある商社のサラリーマン

俺は、とある商社のサラリーマン。

いくつか失敗こそあったが、上司や同僚に恵まれ何とかここまで来れた。

というのも、近々俺は結婚するのだ。

相手は上司の娘。

少しわがままなところもあるが、綺麗で動物好き、マイペースだが母性にあふれ、

何より俺に惚れてくれている。

思い返せば長かった。

家庭に恵まれなかった俺は、一時期ワルぶったこともあった。

父親が借金を残して蒸発、残された母はほどなく病死。

親戚に厄介になったこともあれば、家出してホームレス生活を送ったこともある。

今でも時々夢に見る、その日の食事にも事欠く暮らし。

よくもまあ結婚までこぎつけたものだ。

結婚式も間近に迫り、俺はまたあの夢を見た。

何度見ても憂鬱なこの夢。

常に腹の虫が鳴り続ける。

寝床にしているダンボールをたたんで、もそもそと起き上がる。

体中がかゆかったのも少し前まで、今はその感覚も麻痺している。

気だるいが、食い物を探しにゴミ箱を見回らなければ。

ああ、はやく現実が見たい。

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