黒屋敷

「まずったな....」

小声で呟いたにもかかわらず廊下に反響し、ウワンウワンとなる。

風呂場の反響なんて非ではない。

オレは今日、友達に付けられたへたれの称号を奪回すべく心霊スポットである『黒屋敷』に来ている。

黒屋敷と呼ばれる所以はまず外観が真っ黒なところそして中に何故か光が入らず、中も真っ暗なところかららしい。

懐中電灯があっても正直怖いし帰りたいレベルの暗さだ。

あ、あとここに入って不思議に思ったことがひとつある。

反響が凄いのだ。

ドアを開けばうるっさいくらいにウワンウワンなるし、さっきみたいに呟いても同じだ。

どういう仕組みかは知らないが間違いなくこの恐怖に助長してるだろう。

「あー…迷ったなぁ…」

ブツッ

懐中電灯の電池が切れたのか、明かりが消えた。

正真正銘の常闇だ。

「ヤバッ…」

もうこれで終わりなのk

「ねえ!??キミも肝試し??」

「うわっ!??びっくりした!??」

いきなり声をかけられ振り替えると同い年くらいの可愛い女の子がいた。

「私はね?…」

話が長いから割愛するとして、要約すれば

・怖いのが好きでここによく来るらしい
・オレの声がウワンウワンなってて気付いたらしい、あ、今も話してるからウワンウワンなってる
・僕を一通り堪能させてくれたのち、出口に返してくれる

ということらしい。

「あん、もー、ハイヒール履いて来ちゃったから転びそう」

「なんで履いてきたし(笑)」

そんなことを話して進むのだがハイヒールを履いているくせに彼女は身軽で置いていかれそうだ。

やがて会話も尽きると地下へ続く階段に着いたらしい。

「足元気を付けてねん」

「はいよっ」

彼女はほいほい進むが自分はへっぴり腰で進むしかない。

自分の荒い息だけが聞こえていた。

慣れってすごいな、なんで進めるんだこの女は。

階段を一段一段下る、先が暗くて見えな…

「うわぁっ!??」

ズルッドガガガ

「滑り落ちたーっ(笑)」

楽しそうに笑う女

「なかなか痛いんだぞこっちは…」

怪我はないようだがケツがなかなかに痛い。

「大丈夫?進める??」

「ああ、大丈夫だ」

そして地下へ続く嫌に重々しい扉を二人で開く。

中に入ると、嫌に酸っぱい臭いが鼻を突いた。

「な、なにがあるんだここ…」

「んー、メインディッシュかな?」

なんか縁のようなものに足が当たった。

目を凝らす。

これは…プールか?

ドンッ

バシャッジュワァアアアアア

「なっ!??うわぁああああなんだこれは!??熱い!?溶ける!!」

「それはね?この『ホテル』の王水のプールだよ?実際に昔このホテルのオーナーがこのプールで泊まりに来た客を殺して金品奪って暮らしてたんだって、ひどいよねえ(笑)あたしはそれの13人目の被害者」

もう 何も聞こえない。

指が、まぶたが自分から剥がれる。

あ、よく考えるとおかしいこといっぱいあったじゃん。

意識は無くなり、オレは王水の一部になった。

「黒屋敷」の解説・感想