携帯

ちょいと人には言いにくい話なんだが、

どうせ創作と思われるだろうから勇気を出して書いてみる。

仲間同士で流行ってる遊びの話な。

お前も携帯持ってるだろ?持ってるよな。

今は携帯持ってなきゃ変に見られる時代だ。

その携帯をな、盗るんだよ。

窃盗癖のある俺らからしたら最近の大人や子供は本当に隙だらけ。

盗ったら通話しまくるのかって?

そんな面倒な事はしないよ。

fomaカードってあるだろ?

そーいうのだけ抜き捨てて固体を捌くんだ。

いい金になるんだぜ。

個人的にも飽きたらとっかえひっかえしてる。

普段携帯を疎かにしてる奴はこれだけでもじわじわ来るんじゃないか。

そんな事やって何年か経ったんだけど、

これだけは忘れられないって事があったんだよ。

それを聞いてもらいたいからこうやって書いてるんだ。

あれは1年前、水曜日の朝だった。

いつも通り満員電車の中でスルっと携帯を盗ったんだ。

ターゲットは20後半のリーマンだ。

そしたらポケットに入れた瞬間に鳴りやがったんだ!

子供が聞くようなお気楽な音楽が流れてきたよ。

もう俺真っ青。

この時ばかりは後悔した。

なんでこんなに音量デカくしてんだよ、電車の中なのにさぁ。

ああ不味い、音切れろ、早く駅着けって必死に俺は願った。

けど鳴り止まないし、まだ着かない。

自分の携帯のように出た方が怪しまれないと咄嗟に思い、

俺は携帯を出して、ナンバーを一瞬見て、出た。

「もしもし」

ああ、この時出なきゃ良かったんだ。

返ってきた言葉は

「お前か」

慌てて俺は切ってポケットにしまったよ。

横目で持ち主見ると、何食わぬ顔で立ってたよ。

盗られたことにも気づいてないっぽい。

誰だよ、電話かけてきたの。

そうこうしてるうちに駅に着いた。

メトロは早いわ。

バレないように落ち着いて出る。

盗みにとっては落ち着きが一番肝心だ。

すると鈍い音がした。

何が起きたのか最初は理

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