インターホン

「お姉ちゃん…」

言いながら私は、
祈るように指を組んだ。

姉が昨日から帰って来ない、
と私が知ったのは、
友人宅から帰った今朝のことだった。

内向的で出不精で、
いまだに出かける際には
必ず行き先を告げる姉の性格を考えると、
私達家族にとって異常事態だった。

昨日は、私は友人宅に、
母は疲れからうたた寝が本格的な睡眠になり、
父は残業で朝帰りとなったため、
姉の不在に気づいたのが今朝になったらしい。

だが、年齢が20歳を超えていることがあり、
警察は事件や事故よりも家出と考えていることが
ひしひしと伝わってきた。

私だけ一先ず帰ってきたのだが、
落ち着かない。

ふと、見上げると、
インターホンの不在時の来客を告げるランプが光っていた。

何気なく見ていく。

勧誘。
宅配便。
噂好きの近所のおばさん。

と、急に暗い背景になった。

そのため、
その光景が理解できなかったが、
事態が飲み込めたと同時に、
私は急いで、
まだ警察にいるはずの両親に電話をかけた。

だけど、まだ、姉の誘拐事件は解決していない。

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