新米消防士

俺は新米消防士だ。

最近は不審火による火事が多く、
俺みたいな新米もすぐに現場に駆り出される。

今日は非番だというのに
昼間っからデパートが火事だという。

火事のあっているデパートは
鉄筋の7階建てという大きなものだ。

現場では逃げ遅れた人々が
高層階の窓際に幾重にもひしめき合って救援をもとめており、
なんともいたたまれない気分になる。

出火元は2階の布団売り場のようで、
既に上の階にも火の手が回っていて近寄れない。

俺は懸命に消火活動を試みたが、
炎は水を吸ったように上へ上へ伸びて行くだけ。

かといって窓に分厚い強化ガラスが貼られている為、
窓を簡単に割ることもできない。

結局、俺の奮闘の甲斐もなく、
2階から上は全焼。

そして誰も助からなかった。

こんな経験は初めてでショックを受けたが、
誰も慰めてはくれなかった。

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