万引き

女の横を通り過ぎたとき、
ふと直感が働いた。

歳はいってたが好みの顔をしている。

尾けていたら、案の定、
女は死角になりやすい調理器具売り場で
商品を手提げ袋に入れた。

「ちょっと事務所まで来てくれますか」

店の外に出た女に声をかけた。

狭い空間に二人きりという状況は、
興奮した。

かつてならお構い無しに押し倒していた。

少しでも抑えがきくようになったということは、
年少暮らしも無駄ではなかったらしい。

「何ですか、これは」

手提げ袋にはやはり商品が入っていた。

俯いていた女の目の前にそれを置いた。

「こんなもの盗って、
どうするつもりなんですか!?」

震える声がした。

「え?何?」

「娘の無念を晴らすためです」

女は静かに立ち上がった。

「万引き」の解説・感想