トンネル

もう20年ぐらい前の話。 

15人ぐらいで4台の車に乗って海に行った。 

さんざ海ではしゃいだ俺たちは、帰りはもうクタクタだった。 

帰り俺はA B Cの三人と車に乗った。 

Aが運転、Bが助手席、Cと俺は後部座席に座っていた。 

疲れていた俺とCは途中で寝てしまったようだ。 

休憩するためにドライブインに入ったところで起こされた。 

すると、Aがやたらと怒っている。 

人に運転させといて寝ちまったんだから、怒られて当然だ。 

俺とCは素直に謝った。 

しかし、Aが怒っているのはそんな理由ではなかった。 

Aは、霊感の無い奴は気楽だと言う。 

詳しく話を聞くと、長いトンネルに入った時、急にトンネルの証明が点いたり消えたりしたのだそうだ。 

Aが「どうなってんだ」と思って隣を見るとBが寝ていた。 

Cと俺も寝ている。 

霊感の弱い人間は、心霊現象が起きても気づかないと云う。 

「これは、霊感の強い自分だけに見えた現象なのか」 

Aはそう思って他の車の連中にも聞いてみたが、やはりその現象を見たのはAだけだった。 

俺は、急に怖くなって運転を代わった。 

そこからは、4人でくだらない話をしたり、ラジオに合わせて歌ったりしながら、にぎやかに帰った。 

だって、寝てる間に死んだら嫌だもんな。

「トンネル」の解説・感想