女は部屋に入ると、いつも通り留守番電話の再生ボタンを押した。
『メッセージは9件です』
『もしもしヒロミちゃん。お母さんです。年末は何日くらいに帰ってくるの?お父さんもユウコも楽しみにしてます。連絡してね。午後7時3分』
『もしもし○○化粧品の田中です。この間の洗顔クリームのサンプルの件でお電話させて頂きました。またご連絡致します。午後7時15分』
『………………。午後7時32分』
『あ、もしもしヒロミ?携帯通じないよ。旅行どうするの?ミカもユミも行くよ。タカシも行くって。早いとこ連絡して。じゃあね。アヤコでした~。午後8時10分』
『…………今、駅だよ。午後8時12分』
『もっしーヒロミちゃん!タカシだよ。携帯どうしたの?全然繋がらないじゃん。旅行行くでしょ?もし間に合うようだったらいつもの居酒屋にいるから来てね~!話しよ~。待ってまーす午後8時52分』
『………………今ね、君のアパートの前。ぐふふ。午後8時55分』
『…………今、部屋の前だよ。午後9時0分』
その時、玄関の扉が開く音がした。
女は咄嗟にクローゼットの中へ隠れた。
『もっしー。またまたタカシだよ!さっき言い忘れたけど、この前の合コンのガリガリ女、あれ気をつけた方がいいよ。すっげえヒロミちゃんのことガン見してたから。こえー!んじゃ。待ってまーす!午後9時1分』
『メッセージは以上です』