約束は守ってくださいね

遠くからパトカーのサイレンが聞こえた。

「やっと警察がきたようですね」

と探偵が言った。

あたしは、いましがた、その探偵にすべてを見抜かれ、
命の尊さについて教えられた結果、
潔く刑に服すことを約束したばかりだった。


やつらのせいで狂死した夫の復讐は、
途中で潰えたが、なぜか清々しい気分だった。

「約束は守ってくださいね」

探偵がにっこりと微笑みかける。

「ええ、わかっています」

あたしはすでに二人殺しているから、
死刑は免れないかもしれないが、それでもいい。

探偵との約束通り、
どんな刑にも服すつもりだった。

サイレンの音が少し大きくなった。

「え、ええと。約束は守ってくださいよ」

探偵が、また言った。


「はい。それはちゃんと守ります」

サイレンの音はもう、すぐそこだ。

「だから、約束は守ってくださいって」

困った顔で探偵は続ける。

それから、手で口を覆い、小声で付け足した。

「ほ、ほら。あなたのポケットの小瓶ですよ。
第1の殺人で使った青酸カリがまだ残っているでしょ?」

「約束は守ってくださいね」の解説・感想

  1. 青酸カリってなんだっけえ?