彰「…星野は、たまきちゃんが好きだったのか?」
俺の質問に、
星野は静かな声で「いいや」と答えた。この3週間で、
入り浸っていた茶道部の女の子が3人とも死んでしまった。茶と、和菓子とはいえ菓子が出てくるうえに、
大人しく可愛い女の子が3人だけという、
暇潰しにはぴったりの空間だった。最初は俺だけだったが、
そこに、いつの頃からか星野も加わっていた。
たまきちゃん、は最初に死んだ子だ。俺が質問したのは、
星野がたまきちゃんにかんざしを2本プレゼントしていたからだ。たまきちゃん、嬉しそうだったなぁ…。
だが、それからすぐにたまきちゃんは死んだ。
何らかの毒物を飲んだらしい。
殺人と自殺で調べられているらしいが、
たまきちゃんが自殺なんかするとは思えない。
彰「ああ、じゃあ、さつきちゃんか?」背の高い星野はよく、
小さいさつきちゃんの頭を撫でたり、肩を揉んでいた。またしても、
静かな声で「いいや」と星野は答えた。さつきちゃん。
たまきちゃんが死んで、すぐだった。
電車に…飛び込んだ、らしい。
仲の良かったたまきちゃんの後追い自殺が有力だそうだ。
確かに、さつきちゃんは3人の中で特に大人しかったからなぁ…。
1人で耐えきれない哀しみを抱えていたのかもしれない。
彰「あ、じゃあ、瀬木さん?」ふと、星野が先輩である瀬木さんを
『久美さん』と呼んでいたのを思い出した。★「なんでそうなるんだよ」
呆れたように微かに笑う星野。
影があるのは、
その久美さんの葬式の帰り道だから、か?そう…。
とうとう、瀬木さんまでもが死んでしまった。
唯一の先輩だけあってしっかりしており、
「星野くんも神戸くんも、
入り浸るくらいなら入部してくれればいいのに」とよく頬を膨らませていた。
そんな瀬木さんは、
部室で首吊り死体として発見された。たまきちゃんとさつきちゃんの死の影響と見られるのが当然だろう。
はぁ…彰「ほんと、なんでだよ…」
心の声の後半は実際の声となり、
改めて3人が死んでしまった現実に、
俺はその場にへたりこんでしまった。★「彰…」
星野の声が聞こえた。
★「本当に、お前を含めて4人ともいい奴等だったよ」
…?
俺を、含めて…?
星野の言葉に微かな違和感を感じた瞬間、
頭に感じたことのない、強烈な衝撃が走った。