ためらい

「ずっと好きだったの」

と、A子に言われ、返事を少しためらった。

たっぷり5秒ほど考えて、

「ごめん、俺、他に好きな子がいるから」

と正直に答えた。

2週間ほどして、幼馴染のB代が校舎の3階から転落死した。

自殺か他殺かもわからない。

昼休みにおこった突然のことだ。

緊急集会のあと、A子がそっと寄ってきた。

「ねえ…やっぱり他に好きな子がいるの?」

「このあいだ言っただろ」

こんな時に何を言ってるんだと思いながら冷たくそう返事をした。

その1週間後、オレの部のマネージャーをしているC美がトラックに轢かれて亡くなった。

運転手の話だと、急に歩道のない細い路地から飛び出したのだという。

ふらついていたようにも見えたが、急なことではっきりしないらしい。

悪いことは重なるものだというが、こういうことを言うのだろうか。

その3日後、またA子が同じ事を聞く。

「ねえ…やっぱり他に好きな子がいるの?」

俺は、また返事をためらっていた。

「ためらい」の解説・感想