夫の苦労

ある新築の上棟式のことだ

家主は近所の人も呼んで軽い宴を開いた。

「お呼びいただきありがとうございます。
それにしても立派な家ですね」

「お越しいただき有難うございます。
この家の基礎は私の会社で作ったものを使っているんですよ」

「じゃあ採石場にお勤めなんですか?」

「そうなんですよ、
ただ妻はあまり仕事に理解が無くって
いつも家に帰るとやれ埃が汚いだの家事をしろとうるさいんですよ」

「あぁ、解りますよ。
ウチも似たようなもんです」

「だから、身を粉にして泥のように眠るのが
どれだけ大変なのか教えてやろうと、
こないだ現場につれていったんですよ」

「すごい行動力ですね。
それでどうなりました?」

「それからはもう静かなもんですよ、
おかげでのびのびと仕事にも専念出来ましたし、
晴れて家も建てられました」

「それは良かったですね。
それで奥様はどちらに?」

「今も家を支えてもらってますよ」

「あぁ、お勤めですか?」

「まぁそんなとこです」

「夫の苦労」の解説・感想