時は金なり

アメリカのとある中小企業での話。

「さぁ、荷物をとっととまとめてここから出ていけ!!あんたがここにいる一分一秒も無駄にできないんだ!!『時は金なり』という言葉を知っているかね?君が今この場でもたもたと時間を過ごすことによってその労務費がかさむ一方なのだよ!!わかったら早くここから出ていけ!!」

(…ついにきたか…いつくるかビクビクしてたけど、案外早くお別れの機会が来てしまった)

ここの会社の社長はとにかく金のこととなるとうるさい。

お客さんに出すためのコーヒーやお菓子などには文句ひとつ言わないくせに支払いとなるとうるさいことこの上ない。

そんな社長にたまたま会社の電話を私用で使っていたところを現行犯で見つかってしまい、冒頭に戻るわけだ。

あと少しでお給料日(しかもボーナス)だったのに…こんな簡単にクビにされるとは…

憤りの気持ちをなんとか抑えながら私は会社を後にした。

そして、会社が閉まる頃まで会社の向かえ側にある喫茶店で時間をつぶし、その時を待っていた。

社長が会社の玄関にカギを掛けて出て行くのを確認してから、自分の合鍵を使って会社に忍び込んだ。

まっすぐ社長の机にある電話にむかい、とある番号に電話をかけた。

電子音と合わせて日本語が時折聞こえてくる。

今日は金曜日だから、この事務所には月曜日の朝まで誰も来ない。

なるほど、確かに『時は金なり』の言葉通りだな。

社長の驚愕した顔が見たかったがそれが叶わないのが残念だ。

だが、これでケチな社長をひと泡吹かせられる。

私は、通話中のままの受話器を社長の机の上に置き、事務所を後にした。

「時は金なり」の解説・感想