もう一人

ある日仕事から帰ってくると自分の部屋が綺麗に掃除されていた。

朝脱ぎっぱなしにしておいたはずのTシャツも洗濯されて丁寧に畳んであって、床に落ちていたはずのカレンダーも棚の上に飾られていた。

次の日もその次の日も帰ってくると部屋は綺麗になっていた。

この部屋の鍵を持っているのは僕と僕の彼女だけだった。

僕はきっと彼女が気を利かせて部屋を掃除しに来ているのだと思っていた。

明日は久しぶりの休日だ。

そして明日は彼女の誕生日。

きっと彼女は明日も仕事だと思ってこの部屋に訪れるはず。

僕は今日の日付に丸がついたカレンダーを眺めた。

彼女を驚かそうとテーブルの上にケーキを置いて僕はクローゼットに隠れた。

しばらくすると玄関のドアが開く音がした。

しかし部屋に入ってきたのは彼女よりもはるかに髪の長い包丁を持った女だった。

包丁の先は赤く染まっている。

そういえば昔この部屋の鍵を渡した奴がもう一人いることに今気がついた。

「もう一人」の解説・感想