彼女と雷

俺は急いで自分の家に帰る。

やばい。さっき雷が落ちた。

こういう時に限って運が悪くなる----

周りの目に構わず、走る。

畜生----俺の彼女----世界で一番愛する彼女-----

俺の頭の中にはこの言葉しかなかった。

俺の彼女は小学生からの幼なじみだ。

小学に入学の時、
孤独で機械を組み立てていた俺に、
手を差し伸べてくれた。

だが、この時既に心臓に関しての病を患っていた。

初めはほぼ問題は無かったが、
進級・進学する度に段々と悪化していた。

この事が、
俺を医者としてくれたきっかけだというのは
言うまでもない。

しかし、
それに逆らうように
たちまち歩くだけで息が上がる様になり、
寝たきりの生活が続いた。

勿論、脚や腕の筋肉が落ちた。

しかし、俺は諦めなかった。

その証拠に、
前日、彼女を歩ける様にした。

勿論、心臓もなおした。

彼女は泣いていた。

それだけで俺は嬉しかった。

だから彼女を一生守りたいと誓った。

誓っていた。

誓ったばかりだ。

誓ったばかりなのに、

「くそッ………家に落ちてなければいいが…」

ガチャンガチャンガチャン!!

俺は家に着くと、
鍵を勢い良く開け、
靴を履いたまま、
彼女の元に直行した。

ガラガラガラと、
廊下の端で山積みされていた機械類が崩れるが、
無視する。

これは俺の趣味だ。

今は彼女が先だ。

俺は風呂場に直行する。

「あぁ………………」

俺は床にへたり込み、
足下にあった延長コードを無意識に掴んだ。

彼女は、もう戻らない。戻れない。

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