見たな!

とある古い旅館に泊まった時の出来ごと。

私は夜中にトイレに行こうとして、

見てはいけないものを見てしまった。

この世の者ではない者が首をまわし

「見たな!」と叫ぶと、私のことを追いかけてきた。

私は部屋に逃げ帰り、布団をかぶって震えていた。

すると、旅館の廊下を奴が歩いてくる音がする。

どうやら一つ一つの部屋を調べているようだ。

ガラリ。「ここにはいない…」トットットッ、ガラリ。「ここにもいない…」

声はだんだんと近付いてくる。そしてついに私の部屋の戸が開けられた。

ガラリ!「ここにもいない!!」

すすり泣く声はだんだんと遠ざかっていった。

「見たな!」の解説・感想