パズル

彼女が死んでからどのくらい経つだろう…

彼女の写真を元にして作ってもらったパズルは、相変わらず完成出来ずにいる。

あれは確か彼女の誕生日

彼女に内緒で一緒に行った遊園地で撮った彼女の写真をパズルにしてもらい、彼女に贈った。

最初は何になるんだろ?
なんて言いながら作っていたが、自分の写真であることが分かると、顔の部分のピースを何処かへ隠してしまった。

彼女が死んでしまった今、ピースのありかは分からずじまいだ。

完成すれば大好きだった最高の笑顔をこちらに向けているのだろう。

彼女が死んでからの俺は仕事も手に付かず、何かと理由をつけては仕事を休むため会社をクビになり、食事もろくにしないで部屋引き込もっていた。

俗にいうニートという奴だ。

成人しているにも関わらず親の脛をかじる生活…

このままではいけないと自分で分かっていながらも切り替えられずにいた。

そんなある日、たまたま彼女との思い出の場所を訪れた。

今思い返すと引き寄せられたのかもしれない。

高校時代、彼女と一緒に帰った銀川沿いの道

春には桜が咲き乱れて綺麗だったあの道…

彼女との思い出に浸りながら歩いていると、目の前に1つパズルのピースが落ちていた。

それは紛れもない、あの日彼女が隠してしまったあのピース。

生前に彼女が隠したとも考えられない。

つまり死んだ彼女からの贈り物。

落ち込んでいる俺を励まそうとしてくれているのだろう。

その日から彼女との思い出の場所を巡った。

相変わらず仕事にはやる気が起きなかったが、ピース集めなら頑張れた。

ピースの見つかった場所は

夜景が綺麗で彼女とは何度も行った「月見山」
高校の時よく訪れた「cafe wish」
二人で夕日を眺めた「龍宮浜」
キャンプをした「白樺の森」
そして写真を撮った遊園地「ロイヤルパーク」

あまり訪れたことの無い場所もあったが、とにかくピースは集まった。

やっとパズルが完成する。

金もないくせに雑貨屋で一番高い額縁を買ってきて完成に備えた。

彼女の笑顔が見れる、そう考えていた。

しかし、完成したパズルにはこちらを見て怒っている彼女が写っている。

うわっ⁈

ビックリしてパズルをバラバラに壊してしまった。

確かに彼女の笑顔を写真に納めたはずだ。

なのに何故…?

そうか…

俺は泣いた。

彼女は俺に怒っているんだ。

昔から彼女はダメなことにはハッキリとダメだと言う奴だった。

きっとダメな生活を送っている俺を正すためにピースを贈ってくれたんだ…………

こうして今に至る。

不況の影響もあり、相変わらずちゃんとした仕事には就けずにいるが、アルバイトをしながら頑張っている。

あの頃に比べればかなり充実した生活を送っているはずだ。

バイト帰り、ひと気のない墓地で彼女の墓に向けて手を合わせ、

ありがとう俺がんばるよ絶対にちゃんとした仕事に着く約束する

心の中で呟いて墓地を後にする。

今日も疲れたな…

明日も死ぬ気でがんばらなきゃな。

次パズルを組みたてた時に、大好きだった彼女の笑顔を見るために…

「パズル」の解説・感想